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● セグメンテーションとターゲット |
性別、年齢、ライフステージなどのデモグラフィックスによるセグメンテーションではなく、価値意識でセグメンテーションを行った調査分析の事例をとりあげる。ここではクラスター分析によって5つの価値意識セグメントを析出している。析出したクラスターは次の5つ。
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クラスターⅠ Public Family |
クラスターⅡ Myself Being |
クラスターⅢ New Japanese Dream |
クラスターⅣ Out of Trend |
クラスターⅤ Expanding World |
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社会意識や生活意識を分ける軸を考える際、いまでも古びていないものに見田宗介『価値意識の理論』(弘文堂1966年)にある分類がある。2軸により4つの象限を設定、ひとつの軸は「現在重視」か「将来重視」かで、ふたつ目は「自分重視」か「社会重視」かである。2軸がつくる4象限は、快、愛、利、正の4文字であらわされる価値意識に分かれる。現在重視で自分重視だと「快」、現在重視だが社会重視だと「愛」、将来重視で自分重視だと「利」、将来重視で社会重視だと「正」になる。
見田宗介のこの2つの軸をもとにした軸を設定した。現在か未来かは、「本来の自分」かそれとも「成長する理想の自分」か、という軸とする。自分か社会かは、世間の考えに惑わされることがない「自己基準」か社会や世の中の価値を尊重する「他者基準」か、である。
この新たな2つの軸が構成する平面に、5つのクラスターをポジショニングする。成長する理想の自分&他者基準の象限には、社会的な評価の階段を登りつめ、「勝ち組」を目指すクラスター『New Japanese Dream』が位置づけられる。
そして、クラスター『New Japanese Dream』とは対照の位置にある、本来の自分を志向&自分基準で考えるという象限には、「自分らしさ」「自然体」「マイペース」を価値とし、地位や収入などの社会的な評価に背を向けるクラスター『Myself Being』が位置づけられる。
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● セグメンテーションとターゲット |
服、部屋、生活雑貨の対する嗜好を、言葉ではなく、モノの写真を提示することによって明らかにし、クラスターを行った。
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● セグメンテーションとターゲット |
団塊の世代はいつまでも団塊の世代であり、新人類世代もずっと新人類世代である。「世代」とは、同級生たちが集まる同窓会のように、時代やライフステージにかかわらず同じ時代に生まれ、同じ時代に育ち、同じ時代に生活したものとして、いつまでもついてまわる。
それぞれの世代には世代の社会意識や生活意識の特徴があり、世代特性としてよく語られたりする。ここでは、団塊Jr.世代の次の世代を「ポスト団塊Jr.世代」とし、価値観や生活感覚の特性を、生活行動や消費行動に表れたさまざまな現象をもとにして分析した結果を、簡単に紹介する。
現在、20代後半のポスト団塊Jr.世代は、バブル経済以降の90年代からいままでの時代のなかで育ち、価値観や生活意識を身につけている。生育の時代環境としては、行政改革や金融などの市場主義経済化に代表されるグローバリゼーション、インターネットのインフラ化の代表される情報化、経済成長の停滞が続くデフレなどが大きな要因になっていると考えられる。
グローバリゼーション、情報化、デフレという時代環境の中で、ポスト団塊Jr.世代は、世代として固有な価値観や生活感覚を持つようになる。ポスト団塊Jr.世代の価値観や生活感覚は、時間感覚、空間感覚、関係感覚の3つの領域での変容として、次のように捉えられる。
時間感覚では、朝昼晩などの時間の意味が希薄で時間に仕切りがない「際レス」と、時間を流れでとらえず現在を優先する「イマ至上」である。空間感覚ではケータイ等のモバイルによってどこでも自分の空間にしてしまう「モバイル自分部屋」と、小さい頃から近隣で外国人や外国文化と普通に接していて、和もエスニック、和風も含めてすべてが等価な文化である。関係感覚では、都合が悪くなるとなしにしたり、気軽に諦める「リセットスタンス」、それと嫌いなものは見ないし、もともと接しない、存在しないという「有無の壁」をつくっている。
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● セグメンテーションとターゲット |
ニッチ市場を発見し、一定の販売量を長い間維持したロングセラー製品を開発した事例である。
家電品の製品の発展は、冷蔵庫やテレビなど製品自体の大型化という流れ、テレビ、オーディオ機器やエアコンの各部屋への普及のような個人化・各部屋化の流れがあった。冷蔵庫の大型化は多ドア化を伴って進み、80年代の3ドアの時代を経て、90年代の初めには、400リットルを超える4ドア冷蔵庫が市場の中心的な存在になる。
この400リットル4ドア冷蔵庫は、主に家族が3~5人の一般世帯向けだが、冷蔵庫にはこの他に単身世帯向けの100リットル前後の小さな冷蔵庫の市場があった。一般世帯向けと単身世帯向けの2つが、市場の大きなセグメントを構成していたのである。こうした中で、どちらにも属さない2人世帯というセグメントが発見される。統計データを見れば2人世帯数の増加は明らかだし、何も新たなセグメントの発見とはいえないのだが、2人世帯を製品に結びつけて考える発想は、当時の家電各社にはなかった。家電製品のユーザー像は、単身世帯のライフスタイルか、あるいは子どもがいる家族のライフスタイルが前提とされていたのである。
ニーズの発見の契機は思わぬところにあった。90年代に入って、三洋電機は10年近く前の主力製品である2ドア250リットルの製品を製造販売していた。販売台数が落ち込んだら生産中止にする予定でいたが、ある台数になってからはなかなか減少せず一定の販売台数が売れ続けていたので、生産中止が先延ばしになっていたのである。
なぜ減少しないのか、その理由を求めて購入者調査を実施する。そこでわかったことは、購入者の過半数は2人世帯。しかも購入理由は、旧型品だから安く販売していたが、安さではなく、大きさが2人世帯にはちょうどいいから。大型化の流れのなかで取り残されていた別のニーズを持つ層が見出されたのである。
中心的なゾーンの400リットルでは大きすぎるから、250リットルクラスを買う層がいる。しかし、250リットルくらいの大きさの冷蔵庫は各社いずれも古い型の製品で、安さをベネフィットとしたものばかりであった。2人世帯のなかには、高くてもいいから使いやすい冷蔵庫を求めている層が存在している。
2人世帯をターゲットにした製品開発がスタートし、製品の試作品でターゲットの受容性を確認する「アピアランステスト」を実施、1993年3月、2人世帯向け冷蔵庫、SR-MN27Vは発売された。
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● セグメンテーションとターゲット |
セグメンテーションはマーケティングの概念であるが、同時に、産業社会から消費社会への移行を決定付けたコンセプトでもあった。その象徴的出来事が、フォードからGMへの交代劇。20世紀初頭のアメリカ、1910年代にクルマ市場の成長期を担ったのはフォードだったが、市場が成長後期に移った1920年代になって新たなクルマ・ニーズを開花させたのはGMであった。GMのアルフレッド・スローンJr.は所得階層による徹底したセグメンテーションを行い、クルマを階層の差異をシンボルする消費社会の商品にするのである。
ヘンリー・フォードは、実用的なクルマを大量に効率的に製造することを生涯求め続けた。フォードが1908年以降生産したのがT型フォードだけ、1908年から1927年までの20年間に、同じクルマを約1,500万台製造している。この同一車種生産台数の記録は50年後、フォルクスワーゲンのビートルに破られるのだが、クルマ全体の生産台数が少ない時期でのT型フォードの記録は圧倒的。フォードは、ただひたすら生産性とコストダウンを追求し、1910年には850ドルだったT型フォードは、5年後の1915年には約半額の490ドル、1925年には290ドルと15年前の約3分の1の値段で販売する。生産性の向上による安さの実現のため、ヘンリー・フォードはT型フォードに変わる新しい車の開発は一切行わず、色は黒だけのT型フォードを作り続けたのである。
T型フォードのシェアが最も高かったのは1921年で、その時のフォードのシェアは過半数を占めている。以降、フォードのシェアは低下し、替わったのはGM。GMのシェアは、1924年の18.8%から1927年には43.3%になる。圧倒的なシェアをもつ2つの企業の交代が数年で起きたのである。
GMの成長を支えたのは、「すべての財布」に合った車種のヒエラルキーを作ったことである。所得階層によるセグメンテーションにもとづき車種間に明確な差をつけ、差異に意味がある消費社会にふさわしいクルマとしたのだった。1924年のGMの車種の構成とその価格は次のようになる。
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キャデラック |
2958ドル |
ビュイック |
1295ドル |
オークランド |
947ドル |
オールズ |
750ドル |
シボレー |
510ドル |
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このときのT型フォードの価格は380ドル、GMの最下層車種シボレーの更に下層だった。
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